アビーはトランスジェンダーなのか?:「The Last of Us Part II」

Part II
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一部のユーザーの間で囁かれるトランスジェンダー説

The Last of Us Part IIにおけるもう一人の主人公であるアビーは筋骨隆々の人物として描かれていて、そのせいかトランスジェンダーであると評されていることがあります。

トランスジェンダーの人は、生まれた時に割り当てられた性別が自身の性同一性と異なる。

Wikipediaより引用

一部のユーザーから、アビーは女性として生まれて自身の認識は男性である人物だとされていて、そこから作品全体の批判に繋がっていることもあるようです。

しかし、作中の描写からアビーはトランスジェンダーではないと判断できます。

アビーがトランスジェンダーではないと言える根拠

まず、作中においてアビー本人や周囲の人物がアビーの性自認について語るシーンはなく、確認できた限りでは現在のところゲームの開発者からも言及はありません。そのためトランスジェンダーであるか否かは作中の描写から推測するしかありませんが、アビーの性自認は女性であり、トランスジェンダーではないと判断できます。

「アビゲイル」という名前

その根拠としてまず挙げられるのは、アビーの名前です。作中でも触れられていますが、アビーはアビゲイルという女性名の一般的な愛称、ニックネームです。もしアビーの性自認が男性であるなら、名前を男性名に変えるのではないでしょうか。ポストアポカリプスのこの世界では名前を変えるための法廷手続きが必要ということはなく、周囲に改名を宣言し認知してもらうだけで充分でしょう。

アビーはWLFにおいて一目置かれる兵士であり、さらにアイザックからはソルトレイク組と称されるほど元ファイアフライメンバーとの結束は固いです。

テレビ局でセラファイトに殺されたリアはソルトレイク組の写真を持っているほどでした。男性名を名乗ることで差別や迫害を受けるということはなさそうで、それでも女性名を名乗っているのは性自認が女性だからなのではないでしょうか。

アビーの身体的特徴

アビーの身体的特徴もトランスジェンダー説を推す理由になっていそうです。確かに4年前、公園で父を探しているときのアビーは比較的女性らしい体つきをしているように見えます。

一方で、現在のアビーは男性顔負けの腕の太さがあり、男性ホルモンを摂取しているのではないかと言われるのも納得です。しかし、現在のアビーの筋肉はトレーニングによって身に付いたものと考えるのが妥当です。父を殺したジョエルに復讐を果たすためという理由があり、WLFの拠点には様々なトレーニングマシンを有するジムがあるほか、アビーのベッド脇には父の遺影と並んでダンベルが置かれています。

また、現在のアビーは女性にしては胸が小さいように見えますが、全くないわけではありません。4年前と比べて小さくなったように見えるのは、大胸筋に埋もれているからだと考えられます。現実世界の女性ボディビルダーをみると、一様に胸が小さいように見えます。

さらに、ヘアスタイルが4年前と同じ三つ編みのままであることも女性としての自分を捨てていない証ではないでしょうか。

赤いブラジャーについて

アビーの部屋にある真っ赤なブラジャーも女性らしさを象徴するものであり、アビーが女性であることを示す根拠になりそうですが、おそらくこのブラジャーはアビーのものではありません。

The Last of Us Part IIのアビー編は、マニーに起こされてアイザックのもとに向かうというシーンから始まりますが、そのときマニーがアビーに対して「ゆうべは…部屋ありがとな」と言っています。

昨晩、マニーはアイザックに呼ばれた科学者と一夜を過ごしていたようなので、マニーのセリフからするとアビーの部屋を借りて逢い引きをしていたか、もしくは科学者を招き入れるためマニーの部屋の掃除をアビーが手伝ったということが想像できます。しかし、原文でのマニーのセリフは”Hey, thanks for giving me the room last night(昨夜は部屋を貸してくれてありがとう).”となっていて、マニーがアビーの部屋を借りた、というより、アビーとマニーはルームメイトなので昨晩はアビーに部屋から出て行ってもらっていたということが分かります。

実際、アビーは自室ではなく図書室で寝ていました。女性のアビーと男性のマニーがルームメイトというのは違和感があるかもしれませんが、現実世界のアメリカにおいて男女がルームシェアをすることは珍しくありません。とはいえ、室内にドアも仕切りもない部屋を恋人関係ではない男女がシェアするというのはさすがに違和感があります。

しかし、203号室と同じ並びにある204号室を見ると、Edward HuaiとHailey Sumnerという人物がシェアしていることが分かります。Edwardは男性名、Haileyは女性名です。WLFは戦闘部隊に女性が多かったり事務職に男性がいたりするなど、性別による区別をしない組織だということなのでしょう。一応、室内はメゾネット仕様になっていて生活空間は分かれています。

要は、赤いブラジャーはアビーのものではなく科学者の忘れ物という可能性が高いのです。出発の準備をするために戻った二人の部屋は衣服が放置され台所の流しには食器が溜まっているなど生活感が溢れてすぎていました。客人を招き入れるなら少しは掃除をしておくのではないか、ドアまでの導線にある手すりに掛けた下着を忘れるのは不自然ではないか、という疑問が浮かびますが、アビー、マニー、そして科学者もそういったことを気にしない性格だということなのでしょう。後者の疑問については、科学者によるアビーに対する牽制だったという可能性もなきにしもあらずです。もしそうであれば、やはりWLFのメンバーはアビーを女性と認識していることになります。

なぜトランスジェンダー説があるのか

上述したように、作中の描写からアビーはトランスジェンダーではない可能性が高いことが分かります。ではなぜアビーがトランスジェンダーであるという説が広まっているのでしょうか?

まず、今作がポリティカル・コネクトレス、いわゆるポリコレに配慮した作風だということが挙げられるでしょう。作中世界に性の多様性を持たせるため、主役級のキャラクターであるアビーをLGBTにしたという邪推です。

また、発売前のリークによって不確かな情報が広まってしまったことも原因の一つかもしれません。リンクは避けますが、リーク内容を紹介している国内外の個人サイトを検索してみたところ、アビーのことを「元女性の主人公」としていたり、ジェシーを韓国人、ディーナをインド人と断定している記述があり、今作はポリコレ色が過剰なまでに強いという印象を持たせる表現になっているものがありました。実際のゲームにおいてジェシーやディーナの国籍が明示されるシーンはありませんでしたが、ディーナはニューメキシコ州出身でユダヤ教徒だということは分かります。

現実世界のニューメキシコ州の人種構成は下記の通りで、

46.3% ヒスパニック

44.7% ヒスパニック以外の白人

9.4% インディアン

2.1% 黒人

1.4% アジア系

0.1% 太平洋諸島系

15.0% その他人種

3.7% 混血

WIkipediaより

さらにインドの宗教割合は、

インドの人口に占める各宗教の割合はヒンドゥー教徒80.5パーセント、イスラム教徒13.4パーセント、キリスト教徒2.3パーセント、シク教徒1.9パーセント、 仏教徒0.8パーセント、ジャイナ教徒0.4パーセント(2001年国勢調査)。

Wikipediaより

となっています。作中の描写に加えこういった情報を含めて考えると、ディーナはおそらくユダヤ系アメリカ人で、仮にそうでなかったとしてもインド人でもない可能性のほうが高いはずです。発売前のリークはムービーシーンが流出したようなので、プレイアブルシーンでの描写を考慮せずムービーを一見した印象だけで決めつけているようです。そのうえで、アビーの外見だけを見てトランスジェンダーだと判断したという可能性があります。

作中にトランスジェンダーがいるとすれば

前作でも描かれていたエリーが同性愛者であるということ以外にも、ディーナがバイセクシャルであったりWLFやセラファイトの戦闘部隊の半数もしくは半数以上を女性兵士が占めていたりと今作がポリコレに配慮した作風であることは確かです。しかし、それゆえにアビーがトランスジェンダーだとするのは早計です。

作中の描写から察するに、アビーは男性に劣らない身体能力を持つ女性がいるということの象徴的な存在という側面を持つキャラクターであって、トランスジェンダーではないと言えます。

The Last of Us Part IIにおいてトランスジェンダーがいるとすれば、それはアビーではなくレブです。

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