様々な解釈ができるエンディング。「わかった」の真意とは:「The Last of Us」

Part I
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印象的なエンディング

ジョエルとエリーの二人旅を描く「The Last of Us」は、エリーをファイアフライに引き渡すという旅の目的を完遂することなく、ジョエルの判断でエリーとともに聖マリー病院を後にして終わりを迎えます。

ラストシーンはトミーの街が眼下に広がる崖において、「ファイアフライについてさっき言ってたことは全部本当だって誓って」と迫るエリーに対し、ジョエルは「誓うよ」と返事をします。そしてエリーはジョエルの言葉を聞き、「わかった」と答えて終わるというものです。このラストシーンは、エリーがジョエルの返事についてどう思ったのかをプレイヤーに対して明示していないため、様々な解釈ができるものになっています。

「わかった」に対する二つの解釈

エリーの「わかった」というセリフについて多く挙げられる解釈は二通りあるようです。

一つは、エリーはジョエルの言うことが嘘だと分かっているもののその嘘を受け入れて、今後もジョエルとともに生きることを決意したというもの。もう一つは、エリーはジョエルが嘘をついたこと、言い換えると真実を話さなかったことを受け入れられずジョエルのもとから離れる決意をしたというものです。

「誓うよ」と答えたジョエルに対し、エリーは一つ目の解釈ではその嘘を受け入れることになり、二つ目の解釈では嘘を前提とした関係は続けられないと判断することになります。

この二つはともに充分にあり得る解釈ですが、どちらかと言えば二つ目の解釈の方が説得力があるのではないでしょうか。

一つ目の解釈は、エリーが自分の思いを吐露したのに対しジョエルも自分の考えを示したうえで嘘をつき、エリーはジョエルの自分に対する生き抜いてほしいという思いを汲み取ってジョエルの嘘を受け入れたというものですが、経緯を考えると素直に受け取りがたく感じます。

「誓ってよ」とジョエルに迫った経緯

ジョエルが車中で話したことについて、エリーは嘘だと分かったはずです。だからこそトミーの街に着いて事が落ち着いてしまう前にライリーとの間に起きたことを話し、「私も順番を待っている」という発言によって、エリーは暗に「ワクチン開発のために犠牲になることが私が死ぬ順番だった」ということをジョエルに伝えたかったのではないでしょうか?しかしジョエルの答えは「何があっても戦う目的を見つけなきゃダメなんだ」という死ぬ順番を待っているエリーの考えを否定するものでした。

自分が望む答えを得られなかったエリーは核心を突きます。

ファイアフライについてさっき言ってたことは全部本当だって誓って」

このときエリーが聞きたかったのはジョエルの話が嘘か本当かということではありません。ファイアフライについての話が嘘だと確信していないなら、「本当のことを言ってよ」といった聞き方になるはずで、エリーは私にその嘘を突き通すつもりなのかということを問い質したかったのではないでしょうか。言い換えると、エリーの考えを否定し、自分の考えを主張するという親同然の振る舞いをするのに嘘をついたままなのか、という二人の信頼関係を根幹から問い質すということでもあります。

ジョエルは「誓うよ」と答え、嘘を突き通す覚悟を決めました。おそらくジョエル自身も嘘がばれていることは分かっています。しかし、それでも真実を話してエリーがファイアフライに向かおうとすることを防ぎたかったというのがジョエルの考えでしょう。

エリーはジョエルの嘘を受け入れられなかった

エリーがジョエルの「誓うよ」という言葉によってジョエルを受け入れたのだとしたら、ジョエルが嘘をついたことだけでなく「あたしはまだ待ってるの」というエリーの考えがジョエルに否定されたことも受け入れることになります。しかしエリーはジョエルの「何があっても戦う目的を見つけなきゃダメなんだ」という言葉に対してため息をつき、そしてジョエルの言葉を遮って「誓ってよ」と迫っています。この描写を見るに、この時点でエリーはライリーから受け継いだ自身の考えが否定されたことは受け入れていません。

死ぬ順番を待っている、というエリーの考えはエリーにとって親友であり恋人に近い存在だったライリーから受け継いだもので、ジョエルの「誓うよ」という一言が、ライリーの考えを頭の中から遠ざけてジョエルの言うことを全て受け入れるという急激な心境の変化を引き起こすほど重いものだったとは考えにくいのではないでしょうか。ジョエルの「誓うよ」は嘘であり、嘘であることはエリーも分かっているのです。

ジョエルの答えを聞いたエリーは真実を明かさなかったジョエルに対し「わかった」と返事をします。ここまで互いに助け合いながら苦難を乗り越え、親子同然の信頼関係を築いていたはずのジョエルが親同然の振る舞いをする一方で嘘をつき続けることに落胆し、信頼できなくなり、ジョエルのもとから離れる決意をした「わかった」だったと考えます。

この記事ではこのような解釈だと考察しましたが、「わかった」と言うときのエリーの視線の動き、表情の変化、言葉を発する間、うなずき方などは本当に微妙なもので、どのように受け取るかは多様であり正解を出せるものではないのかもしれません。

2020年4月現在では

作中にて明確な答えを提示していない以上、解釈はプレイヤーに委ねるというのが開発側の姿勢であるはずです。そのため「The Last of Us」の描写のみで考えるしかなかった時期においてはどちらの解釈も十分にあり得るものでした。しかし、その後2014年に「The Last of Us: One Night Live」が開催され、さらに2016年に「The Last of Us Part II」の制作発表が行われた現在は新たな判断材料が出ている状況にあります。

「The Last of Us: One Night Live」

「The Last of Us: One Night Live」はThe Last of Usのストーリーを舞台で行うというイベントで、ゲームでモーションキャプチャーと声優を務めた俳優がほぼそのまま出演したほか、クリエイティブディレクターのニール・ドラックマンが幕間のナレーションを行いました。Playstationの公式YouTubeチャンネルで公開されています。

www.youtube.com

「Epilogue of the Epilogue」

公開されている動画はゲーム中のシーンを舞台化した部分ですが、実は「The Last of Us: One Night Live」には現在公開されていない「Epilogue of the epilogue」というシーンがありました。以下はFANDOMの記述を抜粋し日本語に意訳したものです。

thelastofus.fandom.com

「Epilogue of the epilogue」は「The Last of Us」のラストシーンから数週間が経ったある日のことを描いています。部屋にいるエリーがヘッドフォンで音楽を聴いていると、ジョエルが訪ねてきます。気まずい雰囲気のなか、エリーが「どうしたの?」と聞くと、ジョエルは少しの間話をしていなかったから様子を見に来た、とゆっくりと話し始めました。子ども達が水鉄砲で遊んでいたことを話すジョエルは、自室に籠もりがちなエリーが外に出ることを望んでいたのです。エリーは「マリアと壁の修理をするから」とすぐさまその誘いを断ります。

ジョエルはなんとか話を続けようと自分がトミーのグループでエスターという女性とペアになったことを話題にし、そのエスターが話すジョークのことを思い出そうとしていると、エリーに「もう遅いし、壁の修理があるから」と遮られてしまいます。

ジョエルは落ち込みますがすぐに「1分だけでいいから、お前に見せたいものがある」といって部屋を出て、ギターを持ってきました。エリーが皮肉っぽく「それは何?」と聞くと、ジョエルはテキサス訛りで「これはギターって呼ばれてるらしいんだ」と答えます。

エリーが少し笑いつつ「それは知ってる」と言いながらなんで持ってきたのかと聞くと、ジョエルは少し前から曲を作っていたことを伝えます。もともとサラのために作っていたことをほのめかすものでもありました。

ジョエルがパール・ジャムの「Future Days」の弾き語りを始めると、エリーは聞き入ります。

www.youtube.com

曲が終わると、エリーは「すごく良かったよ、ジョエル」と素直な感想を述べました。

ジョエルはエリーにギターを渡します。「私は弾けないよ」と拒むエリーに対し、ジョエルは「分かってる、でもギターを教えると約束したんだ。受け取ってくれ。」と答えました。エリーは「確かに言ってたね」とギターを受け取り、二人の間に心地よい沈黙が訪れます。

「遅くなってきたしもう休まないと」と言って部屋を出るジョエルに、エリーが「さっきのジョークは何だったの?」と尋ねます。ジョエルは「時計を食べるとき一番大変なことは何?」と聞き、エリーが首を振って諦めると「時間がかかること」と答えました。二人の間に笑いが起き、エリーは微笑みながら「それはひどい」と言うとジョエルも「ああ、俺が聞いたなかで最悪だ」と返し、「おやすみ、エリー」と言葉を残し部屋を出ました。

エリーはギターを抱え上げてゆっくりと眺め、そして弦を鳴らしました。

「The Last of Us Part II」トレイラー

2016年にPart IIの制作発表が行われ、これまでに公開された情報を見ると様々なことが分かってきます。

Part IIは前作から5年後の世界で、19歳になったエリーはトミーの街で暮らしています。最初に発表されたトレーラーは、敵グループを殲滅したと思われるエリーが死体の傍らでギターの弾き語りをしているときにジョエルが現れて声を掛けるというものでした。また、第3弾のトレーラーではエリーが友人のジェシーに「君の親父に怒られたよ」と言われていたり、第4弾トレーラー(発売日アナウンストレーラー)ではトミーから銃を受けとる様子が描かれていました。また、敵地にいるときにジョエルが現れ、「お前ひとりで行かせるはずないだろ」と言っています。

2020年4月現在の情報から推察できる「わかった」の真意

「Epilogue of the epilogue」と「The Last of Us Part II」のトレーラーから分かるのは、少なくともラストシーンから数週間が経った時点ではエリーとジョエルがトミーの街で暮らしているということ、二人の間柄は当初は壁があったものの現在はわだかまりが解けているということでしょうか。

もし「わかった」の意味がジョエルの嘘を受け入れたということなのであれば、エリーとジョエルの間に壁があるのは不自然です。

「The Last of Us」のラストシーンにおいてエリーはジョエルのもとを離れる決心をしますが、田舎といえるジャクソンの森の中で14歳の女の子がひとりでできることはありません。そこでエリーはいったんトミーの街に腰を落ち着け、近く街を出ようと考えます。しかし、ジョエルを筆頭にトミーやマリアが引き留めることは必至で、特にトミーからジョエルの心中を聞かされるうちに徐々に考えが変化してきます。エリーは自身の気持ちとジョエルの気持ちの間で葛藤しながらトミーの街を出ていく決断ができず日々を過ごします。そんな折、ギターをきっかけにジョエルとの仲が再び近づき、歳を重ねるにつれてジョエルが嘘をついた心境を理解できるようになって周囲からは親子同然に思われるような関係になっている、と考えを巡らすことができます。

最初に挙げた二通りの解釈の中間という印象でしょうか。

「The Last of Us Part II」に期待

しかし、これはあくまで現在出ている情報から推測した想像に過ぎません。実際はエリーの気持ちは前作のラストシーンから変わっておらず、生きるためにトミーの街にいるもののジョエルとの関わりはほとんどなく体裁として親子ということにしているだけ、という関係になっているかもしれません。

ニール・ドラッグマンの作家性を考えると、おそらく「Part II」においてもプレイヤーに対してエリーやジョエルの胸中を明確に提示することはないと思います。それでも、前作のラストシーン後にどういったことが起きたのかを推測できる材料が増えることは期待できるのではないでしょうか。

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